オープンソースの分野などでよく出てくる、アパッチ Apache についてまとめておきます。
背景 ~ よく見かける Apache とはいったい何か?
Web サーバーやオープンソースのソフトウェアを使っていると、よく、アパッチ Apache という言葉が出てきます。
たとえば、Web サービスを作るとき、Web サーバー用のソフトウェア Apache が出てきます。
また、Android スマートフォンや Tensorflow などの OSS ライセンスを調べると、Apache License 2.0 が出てきます。
オープンソースの分野で Apache という名前が、なぜ、出てくるのか。Apache とはいったい何か。
ということで、Apache について調べ、ポイントを整理しておくことにします。
なお、このページでは、引用はできるだけ簡素にまとめ、内容を丸めた概要で記載します。正確な内容を確認したい場合は、リンク先や文献を参照してください。
Apache について調べてみる
Apache とは?
Apache について Wikipedia を参照すると、以下となっています。
Apache HTTP Server – Wikipedia
ソフトウェアの分野で Apache といえば、多くが Apache HTTP Server を指しています。世界的に普及しているオープンソースの Web サーバーソフトウェアという理解でよいことになります。
なお、Apache のもともとの語源は”アパッチ族”ですので、以下にまとめておきます。
アパッチ族 – Wikipedia
Apache は、北米インディアンのアパッチ族を指している、ということでよさそうです。
Apache ソフトウェア財団について
Apache ソフトウェア財団が出てきましたので、まとめておくことにします。
当初は、Webサーバソフトウェアである Apache HTTP Server (Apache httpd) のために発足した。
Apache の名称は、ネイティブアメリカンのアパッチ族への尊敬の念に由来している。
Apacheソフトウェア財団 – Wikipedia
Web サーバーを構築するとき、ソフトウェアのデファクトスタンダードとして、LAMP (Linux、Apache、MySQL、PHP)が出てきます。LAMP における Apache は、Web サーバーソフトウェア Apache HTTP Server を指しています。
Apache License 2.0 について
オープンソースを展開する場合のライセンス Apache License 2.0 が出てきましたので、確認しておきます。
Apache License 2.0 は、GNUプロジェクトにより GPL バージョン 3と互換と判断されている。特許権との関係などが明確化されている。
Apache License – Wikipedia
Apache License 2.0 は GPL バージョン 3 と併存できるよう改善されています。
プログラムを作って公開したいとき、OSS のライセンスとして Apache License 2.0 を使うことにすれば、GPL 3 と併存でき、かつ、GPL の強い制約に縛られずに済みます。特許の扱いなども以前より明確になります。このため、Apache License 2.0 を採用するソフトウェアが増え、普及が進んでいる、と理解できます。
少し解釈を入れるとすると、Apache は、やみくもに戦っているのではありません。浸透力が強い GPL (ライセンス条件が厳しい) の陰に潜り込んでゲリラ戦が戦えるよう、理論武装しているわけです。
一例として、Android スマートフォンも、オープン戦略を採り(Apache License 2.0 のライセンスを活用し)、急速に製品が市場に浸透しました。
携帯電話やデジタルカメラなどの既存の製品を作っていた大手企業、クローズ型戦略を採っていた組織の多くが市場撤退に追い込まれたのはよく知られたところです。
日本企業を含む多くの企業が、アパッチ族 Apache に一網打尽にされた、というわけです。
歴史(書籍)を調べてみる ~ なぜ、Apache なのか
上の記載からは、オープンソースを推奨している Apache ソフトウェア財団により、アパッチ族に由来する Apache の名称が採用された、というところまではわかります。
しかしながら、Web サーバーのソフトウェアやオープンソースのライセンスの名称に、なぜ、アパッチ族 Apache の名前が使われているのかについては判然としません。
他の民族の名前を採用してもよいではないか、となるからです。
そこで文献を探すと、以下が見つかります。詳細は、同書籍を参照してください。以下の内容は、原文を修正し、ポイントを整理したものです。
「ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ」
(前半の概要)
1519年に、スペイン軍が北米大陸のアステカ帝国に到達すると、アステカ帝国は2年で滅ぼされてしまった。スペイン軍が南側を攻めると、南米大陸のインカ帝国も同様の運命をたどった。ところが、スペイン軍が北側を攻めると、アパッチ族に敗れてしまう。アパッチ族は、以後二世紀以上にわたって、スペイン軍を撃退し続けた。
アパッチ族がスペイン軍を破った理由は、アパッチ族は政治権力を分散して中央集権を避けていたからだ。
スペイン軍がアパッチ族に負けたのは、レコード会社が P2P サービス会社や音楽の違法コピーを撃退できなかったのと同じ理由だ。
アステカ帝国やインカ帝国は、中央集権的な組織であったため、同じく中央集権的なスペインに攻め込まれると、敗れてしまった。
ところが、アパッチ族は、分散型の開かれた組織であった。スペイン軍がアパッチ族の一部を攻撃すると、権限や情報はさらに分散することになった。全体が崩壊することはなく、反撃は続き、スペイン軍はけっきょく破れることになった。
アパッチ族 Apache は、分散型でアメーバ型のフラットな組織であって、中央集権型のスペイン軍の組織を破った。
オープンソースの分野で Apache という名称を使ったのは(当初は偶然かもしれませんが)、中央集権型のクローズ型の組織に対抗するには、分散型のオープン戦略を採用することで勝てるという信念を持っているからではないか、と推測できます。
オープンソースソフトウェアを展開するにあたり、過去の歴史でオープン戦略を採った事例を探すと、アパッチ族がスペイン軍を破った事例が見つかる。そこで、OSS ライセンスやソフトウェアの名称として Apache という単語を使うことにした、と推測することができます。(推測ですけれども。)
この書籍は、これ以降も非常に面白いのですが、分散型組織と中央集権型組織という観点で、また、オープン&クローズ戦略という観点で、参考になりそうなところが多々あります。
原文はヒトデやクモなどのたとえ話を使って書かれていますので、正確な意図が特定しづらい部分があります。
そこで、単語などは一部入れ替えて編集し、一般的な表現に書き直して以下にまとめておくことにします。(以下は、書籍とは完全には一致しない内容となっています。)
分散型組織の特徴
特徴1 分散型の組織は、攻撃されるとそれまで以上に開かれた状態となり、権限をさらに分散させる。
特徴2 分散型の組織は、中央集権型組織と勘違いされやすい。誰かひとり、トップがいると思うと、判断を誤る。
特徴3 開かれた組織では、情報は組織内のあらゆる場所に散らばっている。
特徴4 開かれた組織は、環境変化に簡単に対応できる。簡単に変化できる。どんどん変化する。
特徴5 分散型の組織は、気づかれないうちに広がっていく性質がある。
特徴6 権力が分散していくと、その業界内の利益は減少していく。
分散型社会でのルール
ルール1 組織は小さいほうが有利である。大きな組織は経済的ではない。
ルール2 分散型組織では、ネットワーク効果が働く。
ネットワーク効果とは、新しい要素が加わることで、そのネットワーク全体の価値が高まる効果をいう。
ルール3 無秩序が常態化する。人々は、好きなことを好きなようにやればよい。整理整頓は不要である。
ルール4 分散した社会では、どこか遠く離れたところに、最高の情報や知恵がある。
ルール5 人々は、贈与経済が活発なところに集まる。そこにいくと、誰もが貢献したがるようになる。
ルール6 分権化が進んだ社会を攻撃すると、それまで以上にひどい目にあう。やられたところは切り離され、残ったところは変化する。変化する何かと戦い続けることになる。
ルール7 分権型組織には、触媒となる場が必要である。
触媒が提供されて行動が促されるが、強制はない。仕切りはしない。どうするかは、それぞれの自由だ。
もし触媒が統制をしはじめると、そのネットワークは危機に陥る。
ルール8 何らかのイデオロギーが燃料になっている。イデオロギーを失うと、分散型組織は崩壊する。
ルール9 分散型組織を調べる場合、正確な調査は意味がない。曖昧に正しいほうがよい。組織を構成する要素をよく観察して、どういうものかを皆でまず認識することが重要だ。
ルール10 フラットな組織が有利である。フラットでないほうが負ける。
これらの項目から連想される、日本の歴史上の人物としては、明治維新の時代の福沢諭吉が挙げられます。
開国を経て、技術や環境が激変する時代になると、変化の少なかった江戸時代の価値観(中央集権型のクローズ型の組織)では対応が難しくなりました。
このとき福沢は「一身独立して、一国独立す」とし、独立した個人(小さな組織、フラットな/分散型組織)の重要性を指摘しています。
また、「天は人の上に人を造らずというが、実際には学問の有無により富める者と貧しい者の差が生じている」とし、個人の学問や情報の重要性、討論や議論(触媒となる場)の重要性を説いています。
とくに、インターネットの影響が大きくなった今では、競争のあり方も常時変化します。前例踏襲の発想や先入観は排除した対処が必要となります。
まとめ
オープンソースの分野でよく見かける、アパッチ Apache についてまとめました。
アパッチ Apache によって市場や社会から撤退させられた日本企業や組織は多数あるように思います。また、最近の戦争やテロなども、分散型、ネットワーク型の戦略を取り込んだものが増えている印象があります。
Tensorflow や Android などの先端領域のように、環境変化が激しい分野において勝敗を争う際は、必須の知識だと思います。
書籍を引用した後半がかなり脱線していますが、この流れのまま、あえて公開しておくことにします。
関連リンク
・ オープンソースに関するまとめ 【ライセンス戦略】
・ よく使う Web サーバー関連コマンド 【Linux】
・ LAMP のバージョン確認コマンド 【Linux】
・ Linux のアクセスログを確認する 【Webサーバー】
外部リンク
・ [PR] 「ヒトデ型組織はなぜ強いのか 絶対的なリーダーをつくらない組織が未来をつくる」 (参考、新版)
”The Starfish and the spider”
・ 「ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ」 (参考、旧版)
”The Starfish and The Spider The Unstoppable Power of Leaderless organizations”, by Ori Brafman and Rod A. Beckstrom
・ Apache License – Wikipedia
・ Apache license 2.0 Licenses (apache.org)
・ Apache HTTP Server – Wikipedia
・ Android (オペレーティングシステム) – Wikipedia
・ Apache Software Foundation: Briefing: The Apache Way
No Jinping, We want reforms.